階層別研修事例を紹介!成功させるコツや行うべきケースも解説

人材育成を効果的に進めるには、対象者の立場や役割に応じた“段階的な教育”が欠かせません。新入社員・中堅・管理職といった社内の階層ごとに必要なスキルや視点は異なります。そのため、多くの企業では「階層別研修」を取り入れ、組織全体の成長につなげています。この記事では、階層別研修がなぜ必要とされているのか、どのような事例があるのか、成功のポイントはどこかをわかりやすく解説します。

目次

企業が階層別研修を導入する本当の理由

階層別研修は単なる教育制度ではなく、組織づくりそのものに直結する「戦略的な仕組み」です。役職や経験年数に応じて求められる能力が異なることから、それぞれの段階で適切な学びを提供することが、人材の早期成長と定着に大きく貢献します。

例えば、新入社員にはビジネスマナーや報連相といった基本行動の習得が求められる一方で、主任や係長クラスになると、チームマネジメントや後輩育成の視点が不可欠になります。課長・部長クラスでは、組織戦略や意思決定に関する知識と視野が必要となります。

このように、階層が上がるごとに“学ぶべき内容”が大きく変化するため、企業としても一律の研修では対応しきれないのが実情です。

また、以下のような課題を抱える企業にとっても、階層別研修の導入は効果的です。

  • 若手社員が伸び悩んでいる
  • 管理職がプレイヤー業務に偏っている
  • 組織の一体感やリーダーシップが不足している

こうした状況を打破するために、各層に合わせた「気づき」や「視座の転換」を促す研修が有効です。階層別研修は、単に知識を伝えるだけでなく、組織全体の視野をそろえ、行動を変えるきっかけをつくる取り組みでもあります。

実際に行われている階層別研修事例

このセクションでは、新入社員から経営幹部まで、各階層に対してどのような研修が行われているのか、実際の企業事例を紹介します。階層ごとのニーズに合わせた取り組みの具体例を知ることで、自社に合った研修のヒントを得られるはずです。

新入社員研修の事例

基本ビジネスマナーについての理解・普遍的なビジネスマインドの涵養とあわせて、最近は実地学習を行うプログラムが主流です。

  • 楽天グループ株式会社の新入社員研修は、社会人としての基礎を固めるとともに、実務を意識した実践的な内容が特徴です。ビジネスマナーや報連相のロールプレイングにより、習慣としての行動様式を身につけ、同期とのコミュニケーションも重視されます。さらに、Data/AI研修では統計やデータ分析の基礎を学び、ビジネスへの応用力を高めます。加えて、Tech研修やハッカソンを通じてITリテラシーとチーム開発の経験を積み、職種を問わず現場で活かせるスキルの習得を目指します。
  • ソニーグループ株式会社の新入社員研修では、配属後に半年間かけて自ら設定したテーマに取り組む「新人テーマ研修」が実施されます。チューターや上司と相談しながら企画を立案し、実装や発表まで主体的に行う実践型の研修です。製品開発に直結するテーマも多く、協働力や課題解決力・発信力が求められる内容となっています。入社直後から本気で挑む経験ができる貴重な機会です。
  • 株式会社小松製作所の新入社員研修は、座学と実地体験を組み合わせた実践的な内容が特長です。入社後はまず集合研修でビジネスマナーやITスキルを学び、その後、全国の工場やテクノセンタを訪問し、現場体験を通じて製品や仕事への理解を深めます。さらに、製造ラインでの実習や先輩社員との懇談を通じて、チームワークや企業文化「コマツウェイ」を体感。研修を通じて、新入社員は社会人としての基礎力だけでなく、現場への愛着と責任感を育んでいきます。グローバルに通用する人材の育成を見据えた、体系的な研修です。

若手社員研修の事例

入社後2~4年目の若手社員には、成長促進と定着支援を目的とした研修が行われています。

  • タカノフーズ株式会社では、新入社員研修を終えた後も「若手研修」や階層別研修を通じて継続的な成長を支援しています。2年目以降の教育制度として、部門横断型プログラムや専門スキル養成・資格取得支援などを提供し、電気工事士などの実務資格取得に注力することで、現場で必要な技術力を体系的に高められる体制を整えています。また、若手社員が早期から責任ある役割に挑戦できるよう、先輩や管理職との連携を重視し、実践的な演習や課題解決型の研修を実施し、各自の専門性やマネジメント力を段階的に育成する文化を根付せています。
  • 株式会社日立製作所では、若手社員向けに多様な研修プログラムを整備し、個々の成長段階に応じた学びを支援しています。必須研修のほか、自らの意思で選択できる研修や、選抜型の高度なプログラムも用意。上司と相談しながら受講内容を決定することで、実務と学びの連動が可能です。研修領域もリーダーシップ・ビジネス・グローバル・デジタル技術・キャリア支援と幅広く、特にLXP(学習体験プラットフォーム)を活用した自律学習の推進が特徴です。主体的に学び、将来の専門性とマネジメント力を育みます。
  • ソフトバンク株式会社の入社3年目社員向けのステップアップ研修では、入社からの経験を振り返り、自身の強みや求められる役割、価値観を再確認する機会が用意されています。「ありたい姿」を明確にし、今後の課題を見つけ出して具体的な行動計画につなげることが目的です。また、3年目として必要なスキル習得にも重点を置き、業務に直結する実践的な内容が特徴です。自らのキャリアを見据え、モチベーションを高めながら成長を促す設計となっており、節目の時期に自身の方向性を再整理する良い機会といえるでしょう。

中堅社員研修の事例

中堅社員には「チームを動かす力」「変化を促す力」が求められ、入社後5年目以降の社員を対象に、将来の管理職候補として必要な事柄を学ぶ研修が実施される場合が多いです。

  • パナソニック防災システムズ株式会社では、入社5年目の社員向けに「中堅社員研修」を実施しています。実務リーダーやチームの中核となる人材を育成する内容です。主な研修項目は、組織での役割理解・問題解決スキル・リーダーシップ・チームビルディング・コミュニケーション能力の強化に加え、自身の理想像を描くワークも含まれています。
  • 株式会社NTTデータ先端技術では、入社5年目の社員を対象に「中堅社員研修」が実施されています。研修は、役割認識の再定義、マネジメント力・ヒューマンスキル・コンセプチュアルスキルの強化に重点を置き、職場のリーダーとしての視座を育てます。同社では、社員の多様なキャリア形成を支援するため、「マネジメント力(MB)」と「専門性(SB)」の2軸によるバンド制度を導入しています。中堅社員研修は、この制度における基礎的能力獲得段階「Common Band(CB)」を経て、Management Band または Specialty Band への進路を見据えて実施されます。

管理職社員研修の事例

管理職には、職場を束ねる能力と、部下育成力をセットにしたマネジメントスキルの向上が求められます。

  • キャノンマーケティングジャパン株式会社では、管理職を対象とした「新任ライン管理職(M2)研修」や「新任M3研修」など、段階的な階層別研修を通じて、戦略的思考や組織マネジメント力の強化を図っています。パフォーマンス管理やメンバー育成を軸にした研修と、戦略立案・組織変革力の習得を目的としたプログラムが提供されます。管理職としての総合力を体系的に磨く設計がされ、キャリアパスに応じたキャリア形成支援制度の整備とともに、自律的な成長を支える体制が確立されています。
  • 株式会社資生堂は管理職層向けに、新任職制マネジャー研修や評価者研修、マネジャートレーニングなどを通じてマネジメント力の強化を図っています。1年2回の人事制度説明会で研修内容や評価基準を詳しく理解でき、フィードバックや対話の機会も充実しています。評価者研修では、公正な評価基準や評価一貫性確認の手法を学び、部下の育成や目標管理力を高めることが狙いです。また、2023年開設のShiseido Future Universityでは、女性リーダー候補向け育成プログラムとして無意識バイアス克服などを扱い、自己認識とリーダーシップの両面から支援しています。

経営幹部研修の事例

経営幹部には、全社戦略や組織開発に関する知見を深める研修が導入されています。

  • キリンホールディングス株式会社では、グループ経営人財の育成を重要視し、経営幹部研修として多様なプログラムを提供しています。戦略推進の中核を担う人材に向け、MBA留学・経営塾受講、新興国課題へ挑む留職制度など多様な学びの場を用意。これにより、食から医療領域まで事業を横断する能力や、グローバル視点を身につける機会を創出しています。さらに、ものづくり人財開発センターでは技術力の向上支援、マーケティング領域ではブランド損益管理を担う人材育成も進行。これらを通じて、単なる管理能力にとどまらない、ビジネスと社会に価値を創出できる経営リーダーの育成を目指す体制が整っています。
  • 株式会社ファーストリテイリングは、経営幹部候補の育成を目的とした包括的な研修制度を整えています。社内教育機関であるFR‑MIC(Fast Retailing Management & Innovation Center)を中心とし、代表取締役会長兼社長柳井正氏の著書を教材とし、執行役員や経営層との直接セッションも実施されています。 研修内容は、財務・会計・ITリテラシー・クリエイティブ・グローバルコミュニケーション・マネジメントスキルなど多岐にわたり、OFF-JT(集合研修)とOJT(現場実践)のサイクルを回しながら“実行力”を体得する構成です。また、選抜型のグローバルリーダー教育プログラムや、年二回のFRコンベンションでは世界中の店長や本部社員が集い、グローバルな視点と経営マインドの共有を図っています。これらにより、フラットなキャリア設計とグローバル経営への対応を両立し、世界基準で成果を出せる経営人材の育成を推進しています。

階層別研修を成功させるコツ

階層別研修は、組織内での役割や責任の変化に応じて社員の能力を引き上げる重要な施策です。しかし、「とりあえず毎年実施している」という形式的な運用では効果が薄れてしまいます。本章では、階層別研修を形骸化させずに成果を出すために必要な設計と運用のコツを5つの観点から解説します。

研修の目的・目標を決める

階層別研修の目的は“役割変化への適応”が基本軸です。新入社員は「社会人マインドと基礎スキルの定着」、管理職は「部下育成と意思決定力の向上」など、階層に応じて変化します。企業の育成方針や経営戦略との接続も重要です。たとえば中期経営計画でグローバル展開を掲げている企業であれば、中堅層には異文化対応や多拠点マネジメント研修が有効です。目標は「営業マネージャーが部下が取引先と実施した商談内容のうち、○○のアクションについて、△△という是正箇所を修正して、次回までに□□というアクションを行うように、フィードバックできるようになる」など、具体的な行動で測定できるレベルに設定しましょう。

受講対象者の必要スキルを洗い出す

受講者の現在のスキルを可視化し、不足している点を明確にすることで、本当に必要な研修テーマが見えてきます。例えば若手社員には「報連相」「プレゼンテーション」など基本的な対人スキル、中堅層には「交渉力」「ファシリテーション」「リーダーシップ」、管理職層には「部下育成」「戦略立案」といったスキルが求められます。階層ごとの業務課題と照らし合わせて整理することが大切です。

研修後の評価方法を決める

評価基準を明確に定めることで、研修成果を客観的に把握できます。代表的な方法として「Kirkpatrickモデル(反応・学習・行動・成果)」の4段階評価があります。たとえば、参加者アンケート(反応)、理解度テスト(学習)、OJTにおける行動変化の観察(行動)、業績や定着率の変化(成果)などを組み合わせることで、短期・中長期の効果を可視化できます。

研修後のフォローアップまで設計する

研修の効果を一過性で終わらせないためには、継続的なフォローが不可欠です。1か月後にはeラーニングでの復習、3か月後には上司との面談、半年後には研修内容の実践報告会などを実施し、段階的な定着を図ります。特にOJTとの連携が重要で、上司や現場と共有しながら「学びを業務で使う設計」にしておくことで、研修成果が現場で活かされやすくなります。

必要に応じて外部への依頼を検討する

社内で対応が難しい分野や、高度な専門知識が求められる研修については、外部研修会社の活用を検討しましょう。例えば「ハラスメント防止」「戦略的思考」「ダイバーシティ推進」などは、外部講師の専門性が有効です。選定時は「業界実績」「カスタマイズの柔軟性」「フォロー体制」「価格」などを基準に比較検討すると、自社に合ったパートナーが見つかりやすくなります。

階層別研修のコストを抑える方法

階層別研修は必要不可欠な取り組みですが、対象者が多くなればなるほど費用もかさみます。本章では、コストを抑えつつ効果を損なわないために、実務で取り入れやすい具体的な方法を5つの観点から解説します。

研修コストの現状を把握

まずは、現状の研修費用を見える化することが重要です。講師費や教材費といった直接費用だけでなく、社員の拘束時間・会場費・運営工数といった「見えにくいコスト」も忘れずに計上しましょう。特に、複数日研修の場合は人件費への影響も大きいため、実態を把握することで改善点が見えてきます。

ツールを活用する

LMS(学習管理システム)やeラーニング教材の導入により、研修の効率化と1人あたりのコスト削減が可能です。サブスク型の教材を活用することで、回数や人数が増えても費用を抑えられます。ただし「導入して満足」で終わらないように、事前の運用ルール設計や管理体制の整備が欠かせません。

内製化を図る

一部の階層別研修は内製化することで、講師費・教材費を大幅に削減できます。たとえば、若手社員向けのビジネスマナー研修や中堅向けのOJT研修は、社内リーダーや人事が担当できる場合も多いです。録画による動画化・マニュアル化・LMSへのアップロードで、内容の再利用も可能になります。

外部に依頼する際は複数見積もりを取る

研修会社の料金体系はさまざまで、日数・講師数・内容のカスタマイズ有無によって費用が大きく変動します。複数社から見積もりを取得することで、費用の妥当性やサービスの比較が可能になります。確認すべきポイントとしては、以下のような項目があります。

  • 講師の実績・専門性
  • 料金内で含まれるサービス(事前打ち合わせ・資料作成・報告書作成など)
  • アフターフォローの有無
  • 緊急時対応の柔軟性

補助金の活用

厚生労働省の「人材開発支援助成金」は、階層別研修に活用できる可能性があります。たとえば、職業訓練コース(Off-JT型)では、中堅社員研修や管理職研修が対象になるケースがあります。ただし、就業規則に研修制度の記載があること、対象研修の事前届出があることなどの条件があります。必ず事前に制度要件と最新情報を確認しましょう。

階層別研修を行うべきケースと不要なケース

階層別研修は多くの企業で導入されていますが、すべての組織や状況において必ずしも有効とは限りません。効果的に運用するためには、「導入すべき場面」と「他の施策が適している場面」とを見極めることが重要です。ここでは、実施すべきケースと、むしろ不要なケースについて整理します。

階層別の役割がばらついている場合は行うべき

部署や拠点ごとに「同じ役職でも担う役割や期待される成果が異なる」状態では、階層別研修が有効です。たとえば、ある課長が実務中心、別の課長がマネジメント中心といった認識のズレがあると、育成方針や評価基準が揃わず、人材育成が属人的になりがちです。階層ごとに必要な役割や判断基準を統一することで、レポートラインの一貫性と組織の安定性を保つことができます。

職務が流動的、個人課題の場合は不要

スタートアップ企業や、プロジェクト制を採用している組織では、役割が固定化されておらず、階層構造も柔軟なケースが多く見られます。こうした環境では、画一的な階層別研修は現場の実態と乖離する恐れがあります。たとえば、役職に就いたばかりでも、高度な業務を担っているメンバーに一律の研修を行うと、逆にモチベーションを損なうリスクも。こうした場合は、「個別最適」を優先し、1on1・メンター制度・スキル別トレーニングなどを組み合わせる方が効果的です。

階層別研修を成功させるなら『推す!研修』

階層ごとに求められる役割やスキルが明確になると、育成の軸がブレず、組織全体のパフォーマンスにも好影響をもたらします。オスケンの『推す!研修』は、貴社の経営方針や育成課題に合わせて、階層別に最適なプログラム設計をご提案いたします。実施後のフォローアップや効果測定にも対応しており、現場との連携を重視した運用が特徴です。階層別研修の見直しや外部委託をご検討中の方は、ぜひ一度ご相談ください。

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