研修効果測定の事例7選!成功例に共通する4つのポイントも紹介

研修を実施する企業は年々増えていますが、その「効果をどう測るか」に悩んでいる担当者も少なくありません。
せっかく時間とコストをかけて行った研修も、振り返りや評価が不十分であれば、現場への定着や行動変容にはつながりにくくなります。
そこで本記事では、実際の企業が行った効果測定の事例を7つ紹介しながら、成功事例に共通する4つの設計ポイントを解説します。
これから研修の設計・改善に取り組む方にとって、具体的なヒントとなる情報をお届けします。
研修効果測定を導入した事例7選
以下に、研修効果測定を導入した企業の事例を7つご紹介します。
各社がどのように効果測定を実施し、どのような成果を得たのかを具体的に解説します。
キリンホールディングス㈱の事例
キリンホールディングス㈱では、社員の自律的なキャリア形成を支援するため、「社内検定制度」や「キリンDX道場」といった社内教育プログラムを展開しています。
これらのプログラムでは、受講者の学習定着を段階ごとに可視化し、実務への応用度を評価する研修効果測定の仕組みが整備されています。
「社内検定制度」は、マーチャンダイザーとしてのスキルを順を追って学習することが可能ですあり、「キリンDX道場」では、コース別の、デジタルスキルの習得度合いや業務改善への貢献度を指標として、研修効果を測定しています。
(出典:キリンホールディングス㈱「研修教育入社後の研修ですべての知識が習得可能」 キリンホールディングス㈱「DX人材育成プログラム『キリンDX道場』を7月から開校」)。
TOPPANホールディングス㈱の事例
TOPPANホールディングス㈱では、社員の主体性を尊重し、意欲を持った社員に質の高いプログラムを提供することを人材開発のポリシーとしています。
具体的には、AWS認定資格取得のためのデジタルスキル研修を導入し、受講者のスキル習得状況や業務への適用度を評価しています。
これにより、研修の効果を定量的に測定し、人材育成の戦略に反映させています。
(出典:TOPPANホールディングス㈱「凸版印刷、DX人財育成のための取り組みを強化」)。
㈱JTBの事例
㈱JTBでは、社員一人ひとりが自らのキャリアを主体的に描き、学び・成長できるように支援するため、「キャリアチャレンジ制度」や「選抜型育成プログラム」などを体系化しています。
これらは年次や職種に応じて段階的に提供されており、社員の多様なキャリアビジョンに対応しています。
研修においては、LMS(Learning Management System)を活用した研修履歴の可視化、上司との振り返り面談、自己評価を組み合わせることで、「学んで終わり」ではなく、現場での実践と定着を支援する仕組みを整備しています。
(出典:㈱JTB「人財開発・育成とキャリア制度」)
花王㈱の事例
花王㈱では、全社員を対象としたDX人材育成プログラム「DXアドベンチャープログラム」を展開し、社員一人ひとりがDXスキルを学ぶことができる体系的な学習環境を整備しています。
全社員を対象としたDXスキル可視化のアセスメントを定期的に実施することで、社員一人ひとりの研修成果を図ることが可能な学習プログラムの提供を行っています。
(出典:花王㈱「花王、グループ全社員に『DXアドベンチャープログラム』を開始」)
スカイマーク㈱の事例
スカイマーク㈱では、㈱グロービス社のマネジメント教育の知見を組み入れ、独自の人材育成体系を構築し、社員の自律的なキャリア形成を支援しています。
研修受講後に、受講者に事後課題としてレポート作成に取り組む機会を設けることで、研修内容の理解定着を促し、研修成果の測定を図っています。
㈱ポーラの事例
㈱ポーラは、社員自身が「自分を知る」「ありたい姿を描く」「学ぶ」「学びを活かす」という4ステップを踏んでキャリア形成を進めていくことをうたっており、自己理解と内発的動機づけが人材育成の核となっています。
こうした学びの場を日常に根づかせるため、オンライン学習サービス”Schoo”を導入。
社員に多様なオンライン講座を繰り返し視聴してもらい、研修成果の測定を行うようにしています。
(出典:㈱Schoo「導入事例」)
㈱オカムラの事例
㈱オカムラは、「人事方針」に、「能力の開発と発揮、および協力・融和に必要な教育を積極的に行い、自己啓発の意欲の増進を図ること」をうたっています。
同社では、「相互理解」「改善」「勉強」「教育」という4つのテーマで、社員間の「話し合い」という機会を奨励し、各種研修受講後の、研修内容の定着と効果を確認を行っています。
(出典:㈱オカムラ「オカムラグループ Sustainability Report 2024 pp.90-98」)
研修効果測定とは?なぜ必要?
企業における人材育成は、単に研修を実施するだけでは不十分です。
重要なのは、研修を通じて「何が変わったのか」を明確にすること。
ここでは、研修効果の定義とその測定方法、そして効果測定が求められる背景について解説します。
研修効果とは「行動・成果」までを含む
研修の目的は、「知識の習得」にとどまらず、「現場での実践」「業績への貢献」までつながってこそ、効果があるといえます。
たとえば「報連相の研修」を受けた社員が、職場で実際に上司への報告頻度を高め、結果として業務の手戻りを減らせた。
こうした“行動の変化”と“成果の可視化”が重要な視点です。
定量評価と定性評価の違いと使い分け方法
効果測定には主に2つの手法があります。
- 定量評価:テストスコア、受講率、KPI改善率など、数値化できる指標
- 定性評価:職場での行動変化、上司・同僚からのフィードバック、本人の内省など
効果測定はどちらか一方だけでは不十分です。
たとえば、研修後のテストで高得点だったとしても、実際には職場での行動に変化がなければ意味は限定的です。
一方で、行動変容が見られても、スキルの裏づけが不明瞭では説得力に欠けます。
そのため、「定量+定性の併用」が推奨されます。
たとえば以下のような組み合わせが効果的です。
- アンケート+上司面談
- テスト+1on1フィードバック
- 研修前後の目標設定+日報や行動記録のモニタリング
効果測定に活用されるカークパトリックモデル
前述のカークパトリックモデルは、実務において研修成果を可視化する上で非常に有用です。
簡単にまとめると以下の通りです。
レベル | 内容 | 具体例 |
---|---|---|
レベル1 | 反応 | 満足度アンケート/研修の印象・雰囲気など |
レベル2 | 学習 | 修了テスト/理解度チェック/ワークの出来など |
レベル3 | 行動 | 上司の観察/自己申告/実務上の行動変容 |
レベル4 | 成果 | クレーム減少/売上貢献/業務効率向上などの実績評価 |
特にレベル3・4の評価は難易度が高いため、準備段階で評価指標の設計をしておくことが成功の鍵になります。
なぜ効果測定が求められるのか?
研修の「やりっぱなし」が問題視される中、効果測定は以下のような観点からも必要とされています。
- 経営層への説明:人材育成の成果を可視化することで、投資対効果を明示できます。
- 予算確保の根拠:効果が示されれば次年度以降の予算取得にもつながります。
- 現場の納得感:現場が「成果がある」と感じられる設計・説明が求められます。
- 制度的背景:ISO30414(人的資本開示)などの制度やESG文脈でも、育成の可視化が求められつつあります。
このように、研修効果の測定は「振り返り」や「改善」だけでなく、人材育成の観点から「組織としての説明責任」に応える重要な施策です。
成功事例に共通する4つのポイント
これまで紹介してきた企業の事例には、効果的な研修を実現するための共通点がいくつか見受けられます。
ここでは、特に重要な4つのポイントを整理して解説します。
評価指標は事前に定義し、目的と連動
研修効果を正確に測るには、評価指標を事後に設定するのではなく、「設計段階から」明確にしておく必要があります。成功企業の多くは、研修目的と測定項目を事前に連動させており、「どの段階まで測るか(レベル1〜4)」を最初から組み込んでいました。
特に、売上や顧客満足度などの業務KPIとつなげて評価を行うケースでは、研修が事業成果とリンクしているため、経営層の納得も得やすくなります。
こうした目的と評価の整合性は、効果測定を「意味あるもの」にするための前提です。
行動変容・思考変化も観察する
数値だけでは研修の本当の価値は見えません。
実際の成功事例では、「行動がどう変わったか」「考え方に変化があったか」という点も丁寧に観察されていました。
具体的には、研修後に上司が部下の言動を観察し、変化を日報や面談で共有する体制が整えられていました。
また、受講者自身が自己内省を行い、それを定期的にフィードバックする仕組みも効果的に機能しています。
数値とあわせて「行動の変化」を捉えることで、研修の真価が見えてきます。
LMSやツールを使ったデータ収集や分析
研修の理解度や進捗を客観的に把握するには、LMSなどのシステムが有効です。
成功している企業では、LMSを用いて受講履歴・テスト結果・アンケートなどを一元管理し、それをもとに継続的な研修改善を行っています。
たとえば、「研修の完了率が低い部門を抽出してアプローチする」「理解度テストの結果から次回研修の内容を再設計する」といった活用が見られます。
こうしたツールによるデータ分析は、効果の可視化と改善の加速に大きく貢献します。
上司・現場と連携した研修後の変化を見る体制
効果測定は人事部門だけで完結させるのではなく、現場と連携することで初めて意味を持ちます。
成功事例では、研修後に現場の上司が積極的に関与し、部下の変化を評価・支援する体制が整えられていました。
たとえば、「1on1面談での行動フィードバック」「日報での変化記録」「営業活動での振り返り」などを通じて、現場での実践と定着を促す仕組みがありました。
現場を巻き込むことで、研修が単なる学習機会ではなく、組織の行動変革につながるプロセスへと進化します。
研修効果測定の導入に必要なステップ
効果測定は、場当たり的に行えるものではありません。
計画的に設計し、関係者全体で共有することで、初めて意味のある結果が得られます。
ここでは、研修効果測定を成功させるための4つの基本ステップをご紹介します。
研修の目的と目標の明確化
最初に整理すべきは「目的」と「目標」です。
この2つは混同されがちですが、明確に区別して設計する必要があります。
・目的とは、なぜこの研修を行うのかという理由
・目標とは、研修を通じて何を達成したいのかという成果の基準
具体的には、「誰に、何を、なぜ、どのように」学ばせたいのかを明文化します。
また目標設定の際には、業務指標やカークパトリックモデルの各段階(反応・学習・行動・成果)を用いて、成果が測定可能な状態になっているかを確認することが重要です。
効果測定の設計と実施
効果測定を正しく行うには、あらかじめ「どの段階の効果を測るか」を定義しておく必要があります。
多くの企業では以下の2つを組み合わせた設計が有効です。
評価の種類 | 内容の例 |
---|---|
定量的な評価 | テストの結果、アンケートの数値データなど |
定性的な評価 | 上司による行動観察、本人の自己評価など |
実施の際には、LMSやGoogleフォームといったツールを用いることで、負担を減らしながら記録と分析を効率化できます。
複数のデータを組み合わせて、受講者ごとの理解度や進捗を立体的に把握する工夫も大切です。
研修後のフォローアップと評価
研修が終了してからの取り組みが、学習成果の定着に大きく影響します。
そのためには、以下のようなフォローアップ体制を構築しておくことが求められます。
・上司との定期的な1on1面談
・OJTの場を活用した行動確認
・評価シートを用いた再確認と振り返りの実施
こうした仕組みによって、受講者が「行動に移したかどうか」を具体的に捉えることができ、次回研修への改善材料として活用できます。
効果測定の課題と対策
最後に、効果測定を実施する際によくある課題とその対応方法について整理します。
よくある課題 | 対策 |
---|---|
評価指標が曖昧で軸がぶれる | 設計段階で目的と評価内容の整合性を確認する |
データ収集が煩雑で業務負担が大きくなる | ツールを活用して自動化と簡素化を図る |
現場の協力が得られず人事部門だけで完結してしまう | 上司や関係者を巻き込んだ運用フローをあらかじめ共有する |
定性的な評価が主観的になり信頼性に欠ける | 行動観察項目や評価シートを標準化して客観性を補強する |
このように、導入前から課題を想定して対策を講じることで、効果測定はより現場で活用されるものへと進化していきます。
研修効果測定を行うなら『推す!研修』
研修効果の可視化や行動変容の確認を目的とするなら、フォローアップ設計まで含めた仕組みづくりが重要です。
『推す!研修』では、学習後の行動確認や定着支援に焦点をあてたプログラム設計を行っており、研修効果を見えるかたちで捉えることが可能です。
受講者の行動を定点観測できるよう、振り返りワークや上司との連携面談、またアンケート分析のテンプレートなどもあわせて提供しています。
こうした仕組みにより、受講直後の理解度だけでなく、数週間後・数か月後の行動変化まで追跡できます。
「やって終わり」ではなく、「現場で活かされる」研修を実現したい方は、ぜひご相談ください。
研修の前後を含む一連のプロセス設計を、実践的かつ無理のない形でご支援いたします。
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